独り旅と一人旅、時々日常

自転車で北海道一周したことメインで書いてきます。たまに雑記かも

北海道part3 地獄のミウラ2

二日目 

 

「どんどん」

 

テントが揺れる。何者かに叩かれたらしい。最悪な目覚めだった。10何年ぶりのテント泊で気持ちよく寝ていたのに起こされてしまった。

 

「管理人さんか?もしかして受付が必要なキャンプサイトか?それか、そもそもここにテントを貼ってはいけなかったのかもしれない。まずい、急いで出なければ。」

 

焦りながらテントの入り口を開け、顔を出そうとする。体に激痛が走った。全くもって起き上がれない。筋肉痛である。久々の運動により、足腰が全て筋肉痛である。

 

誰かが外で僕を待ち構えている。早く出ないといけない。ぶっちゃけ中に閉じこもりたかったけれども、僕がキャンプ場に迷惑をかけている可能性も否定しきれないため、激痛に耐え、這いずってテントから顔を出した。

 

「そんな朝遅くて大丈夫?そろそろ出ないと間に合わないんじゃない?」

 

ミウラさんだった。

 

そして時計を見る。時刻は6時30分。僕が昨日かけた目覚ましが鳴るのは7時。

 

そう、僕の久しぶりのテントでの睡眠はミウラさんに妨害されたのだ。それに加え、筋肉痛で動けない状態から外に出させられたのだ。

 

辛い。辛すぎる。朝の30分をなんだと思ってるんだじじい。おい。

 

なんて思ったけれども、さすがに顔に出すわけにはいかないので、精一杯の営業スマイルで「ありがとうございますー」なんて言った。

 

 

 

まあ、ミウラさんは僕の心配をしてくれたわけだし多めに見ないとダメだ。まして旅先の出会いなんて奇跡みたいなもん。どうせこれから会わないんだろうし、良い印象でも植えつけてやるか。なんて。

 

こんな不毛な考えをしながらゆっくりご飯を食べていた。なんだか違和感がする。ミウラさんは準備ができているはずなのに全然出発しないのである。

 

「ん?これ俺のこと待ってるパターン?心なしか俺がご飯食べるの急かしてるように見えるぞ?いやこれ急かしてるな、確定だ。」

 

と見事に僕の察しのよさを発揮してしまったせいで優雅な朝食は終わりを迎えてしまった。「急いで口に詰め込まねば」そう思い口に詰め込む。

 

この日の朝食は、6枚切りのパンにジャムを乗っけたやつである。パンはバッグに入れたら潰れちゃうから全部食べよう、なんて思っていた。皆さま。食べたことありますか。焼いてない6枚切りのパンにママレードジャムを乗せたやつ×6枚。

 

口がパッサパサになるのである。パッサパサ。飲み物が水しかないし、味も全部一緒だしでめちゃくちゃ飽きる。食べづらい上に急いでいるため、それはもう、むせるむせる。

 

そんな僕の様子を見かねて、ミウラさんは先に出発することに。なんだかミウラさんの中では、一緒に走るのが決まってたぽい。僕は1人で走る気満々だったのでちょっと悪いことをしてしまった気がする。

 

と思ったけれど、考えるのも面倒くさいので、再びマイペースでパンを食べ、準備に取り掛かった。ちなみにパンは4枚しか食べれませんでした。結構お腹いっぱいになる。おかげさまで残りの2枚はバッグに。

 

 

準備を終え走り出す。徐々に筋肉痛が心地よくなっていくのを感じながら軽快に走った。なんだかんだ20分ほど走ったら合流した。ミウラさんと世間話をしながらゆっくり漕いでいった。

 

「ガタン」

 

急な大きい音と同時に僕の自転車が止まったのである。僕の手が勝手にブレーキしてるとかではなく。

 

「うおー」とかなんとか言って原因を探す。すぐに原因は見つかった。キャリアが外れていたのである。(荷物載っけるやつ。これが外れて後輪に接触したから急停止したよう)

 

ロードバイクの異音を確認しながら」

 

なんてカッコつけていたものの、気付いていなかったのである。ださ。

 

まあすぐ治して再出発。襟裳岬に向けてペダルを踏み出す。すると「もう俺置いて行きな。俺のペース遅くて疲れるでしょ」とミウラさん。我「あ、りょーかいです。襟裳岬で待ってますね」一瞬でギアを一つ上げ、去る。

 

このとき、改めて僕は人のペースに合わせることのできない社会不適合者であると感じると同時に、1人で行ける快適さに改めて気付いてしまったのである。

 

 

襟裳岬に近づくにつれ、アップダウンが大きくなる。下り坂では時速50kmほどのスピードが出る。30秒ほど下ると上りがやってきて、ようやく登れた、なんて思った瞬間に下ってまたしんどい上りである。

 

しんどかった。この時はそれほどロードバイクに慣れていなかったため、上りながら水を飲むとか下りでのペース配分とかもできていなかった。事前にロードバイクになれるの大事。

 

なんやかんやで襟裳岬に到着。

f:id:goingcrazy:20200512232231j:image

観光客がいた。おそらくツアーかなんか。結構駐車場も大きくて驚いた。実際僕は

 

「わざわざこんな辺鄙なとこ来る人おらんやろ」

 

なんて思っていたけれども、結構な数の人がいた。

 

観光客のかた気の毒だよね。まあ写真見たら分かると思うけど、めちゃめちゃ霧がかかっていて面白みないもん。なんも見えん。

 

襟裳岬なんて夏は濃霧で景色が見れないなんて言われてるんだからわざわざここに来んでも。僕は達成感があったのでいいんですが。

 

景色を見る観光地はね、一日で複数箇所回れるスケジュールを立てないと一個残念だったときのショックが大きくなるよね。なんて思った。

 

だって襟裳岬なんて周りなんもないし主要都市からかなり離れてるからスケジューリングの観点から見たら絶対はずれよ。

 

 

話がそれた。

先ほどの看板を撮り、記念に自撮りもしてみた。むずかった。世の女性の方々はなぜあれほどまで自撮りに慣れていて、うまく写真を撮れるのでしょうか。うまく撮れないから諦めてサングラス着けながら写真とった。

 

そうこうしているうちにミウラさんが来た。2人で写真を撮り、世間話に花を咲かせていた。

 

ゆっくり話しているとまたまたミウラさんが僕を急かしてきた。ミウラさん準備が早い。早すぎる。なんで俺より30分遅く来て俺より準備早いんだよ。

 

僕は今朝急かされてとんでもない思いをしたので、その反省を活かし、「僕まだ時間かかるんで先行ってていいですよ!また会えたらいいですね!」なんて言って行ってもらった。

 

これですぐ出発して追いついたらいやだしな、思ってゆっくりご飯を食べた。今朝の残りのパン2枚である。ぺちゃんこだった。

 

今度は寝床に向け出発。トンネルが多かった。皆さん。トンネルって知っていますか。通ったことあります?自転車で。

 

あれね、とんでもなく辛いんです。まず寒い。陽の光がない。長ければ長いほどトンネルの中が冷える。2km以上のトンネルだと、入った瞬間に空気が冷える。5kmのトンネルもあって、とにかく寒かった。

 

そして飽きる。景色が全くもって変わらん。トンネル側面に「出口まで○メートル」なんて表記が目に入ってしまい進んでないように感じてしまう。あれ、授業中に何回も時計見て「なげえ」て感じるのと一緒。

 

極め付けが、トラックへの恐怖。僕たちロードバイク乗りは道交法上、車道を走ります、たぶん。大体のトンネルって歩道広くて自転車も通れると思うんだけど、あの辺のトンネルは歩道が狭くて自転車走れません。

 

それゆえ車道を走るわけなんだけども、いかんせん車道の脇が狭い。トラック怖いな、なんて思って歩道側によるとトラックが寄せて通っていく。皆さんが想像してるより近くを通っていく。ほんとにすれすれ。よく事故らんかったわ。

 

だからあえて車道の方に出て、トラックには大きく避けてもらう必要がある。ロードバイク初心者だと、トラックを避けたい一心で歩道側に寄ってしまうんだけど、それが一番危ないのでもし参考になれば。

 

 

つらーいトンネルを抜けるとまたトンネル。またトンネルを繰り返して、僕の心に限界が来てしまった。

 

前に進まないのである。いくら力を出しても空回りしているよう。どうやっても進めず、ついには道端に座り込んでしまった。

 

補給食を食べて頑張ろう。そう思い漕ぎ始めたもののやはり進まず、また止まってしまう。

 

「どうしよ、このままじゃキャンプ場に行けないし、そもそもコンビニすらなくて休憩すらできない。リタイアしたい…」

 

やるせない気持ちでいると、正面からライダーが手を振ってきた。対向車線を走っていて、直接声を掛けられたわけではないけれども元気がでた。

 

力を振り絞って漕ぎ始める。時折、「頑張れ」なんて声をかけてくれるライダーさんもいた。

 

たくさんの通りすがりの応援のおかげでどうにかキャンプ場に辿り着くことができた。本当にしんどい時の応援ほど心に染みるものはないと実感した。

 

実はキャンプ場付近でミウラさんに自転車を見つけたんだけれども、絡まれるのが嫌だったのでそのままスルーしました。すみません、ミウラさん。

 

キャンプ場に着いたらすぐ寝てしまっていた。疲れていたのだろう。肉体的に疲れているのはもちろんだけれども、精神的疲労の方が僕は嫌だな、なんて。

 

 

二日目

走行距離:145km

f:id:goingcrazy:20200513003007j:image